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主な結論
Argos Index®は9.9x EBITDAで安定
Argos Index®は2023年第2四半期にわずかに上昇して9.9x EBITDAに達し、2022年第4四半期の水準まで回復した。過去3四半期にわたって安定しているが、過去5年間の平均である10.2xを下回っており、2021年第2四半期の最高値よりも1.7x EBITDA低い。
第2四半期のIndexの安定の背景には、ストラテジックバイヤーのM&A活動の回復と、買収に支払われた価格の上昇がある。株式市場の上昇基調に沿って、支払価格のマルチプルは9.6x EBITDAまで回復した。この傾向は、プライベートエクイティファンドの活動の減退および支払価格のマルチプルの低下(10.3x EBITDA)と対照的である。
全体的には、ミッドマーケットの価格は、持続するインフレと継続的な利上げ、そして景気後退寸前にあるユーロ圏というマクロ経済環境の影響をそれほど受けなかった。2023年上半期のユーロ圏ミッドマーケットのM&A活動は、(2022年下半期比で)取引金額が30%減少し、取引件数が15%減少したが、2023年第2四半期は第1四半期と比較して、取引数が安定した。実際に、売り手の価格はまだ新しい環境に適応しておらず、市場の反転局面では通常、買い手の期待との差が調整されるには時間がかかる。
市場では緊張が高まっており、二極化が大きく進んだままである(第1四半期と同様)。アッパー・ミッドマーケットとローワー・ミッドマーケットの価格の差は3.6x EBITDAに縮小したが、依然として大きい。第2四半期には、7倍未満または15倍を上回る極端な水準のEBITDAマルチプルの割合が全取引の48%を占め、過去最高の値に達している。
Argos Index®ミッドマーケット
EV/EBITDA倍率中央値の6カ月移動平均値
出所: Argos Index©ミッドマーケット / Epsilon Research
ストラテジックバイヤーの支払価格のマルチプルの回
復が、指数のレジスタンスレベルを牽引
ストラテジックバイヤーの支払価格のマルチプルは、当四半期に9.6x EBITDA まで回復した。上場している買い手は、2023年の公開市場の好転から恩恵を受けた(1)。予想を上回る財務業績を出した大企業(2)は、構造的変化を受けてビジネスモデルを変革すべく、魅力的な成長機会の探求を継続した。
投資ファンドの支払価格のマルチプルは緩やかな下落を継続し、1%減の10.3x EBITDAとなっている。一方で、LBOの取引数は2023年第2四半期に3%減少し、2023年上半期では、2022年下半期比で22%減となった。プライベートエクイティは活動と価格の両方において、継続的な利上げ、借り入れコストおよび借り換えコストの増加、そしてレバレッジの低下から影響を受けた。
ストラテジックバイヤーがミッドマーケットをリードし、ファンドはそれよりも静観的な態勢にあることから、両者の支払価格のマルチプルは収束しつつある。とは言え、その差は依然として大きく(0.7x EBITDA)、ファンドはより選択的であると見られ、高価格で質が高い資産を優先している。
(1) EURO STOXX® TMI Smallは、2023年1月1日以来6.1%上昇している。
(2) ユーロ圏の大企業の純利益率の平均値は、2019年の7.2%に対し、2023年3月は8.5%だった。
出所:Refinitiv in Agefi/Dow Jones
企業価値/ 実績EBITDA
Source: Mid-market Argos Index© / Epsilon Research
両極端のマルチプルの取引の割合が記録的な水準に
2023年第2四半期には、EBITDAマルチプルが7倍未満か15倍を上回る取引が全体の48%を占め、過去最高水準となった。EBITDAマルチプルが15倍を超える取引は22%を占め、過去5四半期の値を上回っている。同様に、EBITDAマルチプルが7 倍未満の取引は、全取引の約4分の1(26%)を占めている。一方で、EBITDAマルチプルが20倍を超える取引の割合は、過去最低水準にある(全取引の2%)。実際には、EBITDAマルチプルが15倍~17倍の取引が大半である。
Argos Index™のサンプルにおけるマルチプルが15x EBITDA を上回る取引の割合
EBITDAマルチプルが7倍未満の取引の割合は、分析の対象となった取引の26%を占め、過去最高の水準にある。
Argos Index™のサンプルにおけるマルチプルが15x EBITDAの取引の割合
出所:Argos Index© mid-market / Epsilon Research
Share of transactions at extreme multiples (15x EBITDA)
出所:Argos Index© mid-market / Epsilon Research
ミッドマーケットのM&A活動は、低水準で安定
2023年上半期のユーロ圏のM&A活動は、2022年下半期比で取引金額が30% 減少し、取引件数は15%減少した。この傾向の主な原因はアッパーセグメント(1.5億~5億ユーロ)であり、取引金額が45%減少し、取引件数が20%減少した。
世界的なM&A市場は、2023年上半期に取引金額が38%減少して1.3兆ドルとなっており(1)、アッパー・ミッドマーケットの下落はこれと一致している。M&A 活動はマクロ経済環境の影響を受けており、具体的には、依然として記録的な水準にあるインフレや、欧州中央銀行(ECB)による利上げの継続(2)、ウクライナの戦争が欧州大陸で続く不確実性を助長する中でのユーロ圏の景気後退(3)が挙げられる。
一方で、当四半期のミッドマーケットのM&A活動は安定を見せた。取引件数は2023年第1四半期比で2%増加し、開示された取引金額は、(非常に低い水準から)32%増加した。ミッドマーケットのM&Aは小規模の取引によって牽引され、世界市場よりも強靭性が高く、変動性が低いことが証明されている。
(1) 出所:Refinitiv in the FT, 2023/07/01
(2) 欧州中央銀行(ECB)は2022年夏以来、金利を7回引き上げている。
(3) Eurostatによると、欧州のGDPは、2023年第1、第2四半期共に0.1%減少している。
ユーロ圏ミッドマーケット(1500万~5億ユーロ)取引件数と取引金額
出所:Epsilon Research / MarketIQ
Eurozone Mid-market - Number of deals
出所:Epsilon Research / MarketIQ
プライベートエクイティファンドの活動は引き続き減退し、第2四半期のミッドマーケットのM&Aにおけるプライベートエクイティファンドの割合(1)は、取引件数・取引金額共に15%を下回る記録的に低い水準にある。
(1) ビルドアップは含まない。
ユーロ圏ミッドマーケットにおけるLBOのシェア
出所:Epsilon Research / MarketIQ